2023年04月02日

JIDA創立70周年 ESSAY COLLECTION


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公益社団法人 日本インダストリアルデザイン協会/JIDAは、2022年10月20日に創立70周年を迎えた。
その記念事業のひとつとして、「私とデザイン」 をテーマとした会員のエッセイ集が発刊された。

私も投稿し、掲載していだいた。
この冊子は、おそらく会員にしか配布されないので、それ以外の方が目にする機会はないだろう。
せっかくなので、私のブログ読者にも是非お読みいただきたく、ここに載せてしまいます。


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この写真だと読みにくいので、テキストも掲載しましょう↓


JIDA創立70周年記念エッセイ

照明器具に巡りあえた喜び/並木紀之


私の仕事は、照明器具の開発だ。
デザインはもちろん、設計し、工場へ通い、商品化までの作業にひと通り携わる。
『照明』と出会ってから、30年以上が経過した。
これまでの経緯をここに記したい。
 
デザイン事務所に勤務していた20代半ば、照明器具会社に転職した。
入社して間もなく、海外の協力工場へ出張。
当初は(希望とは異なる)製造に関する業務が主だった。
しかし、これが照明器具にハマるきっかけに。
 
照明器具には構造がシンプルなものがあり、設計を勉強したことがない私でも理解でき、製造図面が描けたのだ。
そして『光』そのものが持つ魅力にも惹かれていった。
 
30歳目前で、先輩が経営するデザイン事務所を手伝うこととなり、照明会社を退職。
同時にフリーでデザイナーとしての業務をスタート。
直ぐにデンマークの照明会社から、開設したばかりの日本支社を手伝うよう依頼があり、快諾。
社内レクチャーでポール・ヘニングセンさんのデザインに感銘を受け、益々、照明器具の虜になっていった。
 
そして、インゴ・マウラーさんの存在が私に大きな刺激を与えてくれた。
2019年に逝去したが、彼が創造した数々の照明器具は、永遠に賞賛されるであろう。
縁あって日本版取扱説明書の製作をしているが、そのユニークなデザインにいつも驚かされる。
 
2021年、後輩の要請により、もと居た会社と業務委託契約を結んだ。
社員に混じり照明器具の開発を行っている。その会社(YAMAGIWA)は、2023年に創業100周年を迎える。経営会社が移行するなどの変化はあったが、優秀な社員達は今も健在だ。
 
私は、照明器具に巡りあえたことに幸運を感じる。
様々な素材と光源を組み合わせることで成り立つプロダクトは、とても自由で魅力的だ。
今後も仲間と一緒に、その『自由』を大いに羽ばたかせていきたいと思っている。


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エッセイには、ポール・ヘニングさんがデザインした 『PH5』 と、インゴ・マウラーさんデザインの 『yayaho』 の写真を合わせて掲載した。
どちらも照明器具の歴史を飾る名作中の名作だ。

その隣に私がデザインした 『Pure White』 を並べていただいた。 (ちょっと図々しかった? 笑)

ここに、器具の写真を提供いただいたルイスポールセンジャパンさんとスタジオノイさんには、改めて感謝申し上げます。
ありがとうございました。

posted by 代表 at 17:51| My Design

2022年04月22日

へら絞り工場を視察


先日、へら絞りの工場に行ってきました。
新製品開発の為、事前に確認したいことがあったので。


へら絞り工場に来たのは30年振りくらい。
しばらくの間、作業の様子を見させていただきました。


「へらしぼり」って、聞いたことがない人、多いよね。

へら絞りとは…
あらかじめ作っておいた型(立体的な回転体)に金属板(円盤状の平板)を合わせて、回転しながら成型する手法のこと。
「へら」と呼ばれる棒の先を、金属板に押し付けながら少しずつ形にしていきます。
陶芸で使う「ろくろ」の金属版って感じでしょうか。


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ベテランの職人さんが、鮮やかな「へらさばき」で形にしていました。
簡単そうだけど...熟練の技だからそう見えるんだろうな。


私が行った時は、アルミで深めの容器を作っていました。
画材関係で使われるとのこと。


照明器具では、この「へら絞り」で作った部品が多く使われます。
ランプの傘(シェード)をはじめ、器具を壁や天井に取り付ける為の部品である「フランジ」や、ソケットを覆う「ソケットカバー」などが主なところです。


例えば、私が2014年にデザインした小型ペンダントのシェード↓

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1ミリ厚の鋼板をへら絞りで成型し、外側に真鍮色メッキ、内側には白色塗装を施しています。
型には安価な木型を使い、少量生産に対応していただきました。
ちなみに、大量に生産する場合の型は金属製(金型)になります。


このような「へら絞り工場」、国内においては減少傾向だそうです。
もの作りの拠点が海外に移行しているのです。
この素晴らしい技術が国内で残っていけるといいんだけど。

posted by 代表 at 09:24| My Design

2021年12月05日

ロートアイアン風の照明器具


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先日、川口市の工場に行ってきた。
仲間と駅で待ち合わせをしたんだけど、早めに行って一人ランチをすることに。


食べ終わってから駅前広場に戻ると、昼時なのに照明器具が点灯している。
タイマーの設定ミスだろうか?


実はこれ、私がデザインしたもの。
発売が2004年なので、もう17年も継続しているロングセラー。


ブラケットと庭園灯、門柱灯を揃えるシリーズ商品で、当時流行りだしていたロートアイアンの意匠を取り入れたものだ。
ロートアイアンは、鉄をハンマーでたたいて造形したもので、窓枠や階段の手すりに使われてる。


上の画像は、シリーズで最もシンプルな門柱灯で、ロートアイアン風の部品が少ない。
ブラケットだと、クルリと丸まったアームが付くので、いかにもそれっぽく見えるんだけど。
でも、そのアームはハンマーでたたいてなくて、アルミダイキャストで作っている。
だから 『ロートアイアン風』 なのね。


それにしても、自分のデザインしたものが身近で見れるのは嬉しいことです。
ここみたいに何台も並んでいると尚更。


あれ? 手前の、ランプが真っ直ぐに立ってないね。
ソケットが曲がっているのかな?
ま、いいか。

posted by 代表 at 09:10| My Design